新築工事現場が近所にあると、家にまったく興味のない人でも、その様子をちょこちょこ眺めたりします。
まして、自宅から見えるところで工事が行われていると、騒音やホコリなどが気になって、様子を見ざるを得なかったりします。
この新築工事現場は、家を購入しようと考えている方にとっては、展示場よりずっと参考になります。
工事現場はある程度工事が進んでいくと家の周りを仮設足場が取り囲んで、建築を依頼した方や請け負った業者、建築を許可した役所、設計士など、たくさんの情報が掲示されています。
また仮設足場には建築資材やホコリ・ゴミが外部に飛び散らないようにシートが貼られていますが、そこにも建築を請け負った住宅メーカー名が書かれたシートが貼ってあったりします。
ご自分が家を建てようと思い立ったときは、そういった新築工事現場廻りから始めるのも良いかも知れません。
住宅展示場が夢の空間であるならば、工事現場は現実の空間です。
いつまでも夢を見ているわけにはいきませんので、夢と現実とのギャップをこの工事現場で見つけられればしめたものです。
しかし、この現実を知らずして家を購入してしまう方が結構いらっしゃるのには驚かされます。
せめてこのページをご覧になった方だけでも、この現実の工事現場の見学をしてください。
隠れてしまう工事のチェック
建物の土台が敷かれるまでの工事は後で隠れてしまうので、よく見ておく必要があります。
では土台敷きまでのどういう点を注意して見学すれば良いのでしょうか?
(1)地盤改良工事が終了して一定期間をおいてから基礎工事に着工しているか?
地盤が軟弱なため地盤改良工事をしなくてはならない場合、その地盤に『杭』を打ち込むことがあります。
鋼製の管型杭を打ち込んだり、地盤に穴を掘りながら固化剤をを流し込んで柱状にする湿式柱型杭などがありますが、他に『杭』を打つほどではないが、地盤表面が若干軟弱な場合は、地盤の表面の土にセメント系固化材を混ぜて固化させる表層改良を施したりします。
鋼製管型杭の場合はそれほど期間を空けなくても問題ないのですが、セメント系固化剤を注入している工事は3週間から1ヶ月程度はそのままの状態で固めた方が良いのです。
(2)基礎工事が素早くないか?
基礎工事は住宅建築の中で最も重要な工事の一つです。
そして、出来上がってしまうとその中身がまったく判別できないのが基礎工事の特徴です。
ですから工事中の見学が重要なわけです。
工事途中に写真を撮って関係機関に提出したり、第三者機関が検査しに来たりします。
鉄筋の太さとか間隔とかも大切な用件ですが、最も重要なことは鉄筋とコンクリートがしっかりと絡み合っていることです。
しかし施工した後では絡み合っているかどうかが分からないので厄介です。
この点をどう判断するかというと、基礎をかたどっている型枠を外した後に見るしかありません。
外した後にコンクリートの骨材がザクロのようにむき出しになっている箇所があれば、そこは鉄筋とコンクリートがうまく混ざり合っていません。
コンクリートを型枠内に流し込む際に振動装置(バイブレーター)をしっかり使って鉄筋と型枠の隙間にしっかりとコンクリートが行き渡るように施工するのですが、このザクロのようになってしまう原因の多くは、急いで施工しているのでバイブレーターの使い方が雑だったり、鉄筋の施工が雑で、間隔が均等でなかった場合などにより起きてしまいます。
基礎業者は型枠を外した直後にそのザクロのような箇所をモルタルなどで整形しますが、後でよく見ると、整形したかどうかがよく分かるのです。
工期が短く指定されている工事現場などでたまに見られる現象です。
(3)基礎工事完了後一定の養生期間をおいてから土台を敷いているか?
基礎の型枠にコンクリートを流し込んで、5日ほどしてから型枠を外します。
最近のコンクリートは強度が出るのが早いため、型枠を外した頃からコンクリートの強度が出始めます。
それでも型枠を外してからすぐに土台を敷いたりすると、まだ強度が完全に出ていないので基礎が沈下したりすることがあります。
また、基礎の天面を水平にするために「レベラー」と呼ばれる水状のセメントを流し込むことがあるですが、これもあまり状態が良くないと、土台を敷いた時などにヒビが入ってしまったりします。
基礎は建物の命ですから、一番時間をかけて施工しないといけないのです。
簡単ではありますが、こんな点に注意して見学すると、建築現場によってそれぞれ期間が異なっているのに気がつきます。
どんな場合でも共通して言えることは、『適切な工期をもって工事にあたること』が、非常に重要であると言うことです。
住宅メーカーや請負業者は、工事を早く終わらせることが早期資金回収につながるのでメリットはたくさんあるのですが、施主であるお客様もローン金利や仮住まいの家賃などなど、少しでも早く建物を完成させた方が、金銭的に有利な面があります。
しかし、そんな理由のために急いで建物を完成させて、後で取り返しのつかないような家になってしまっても、もう元には戻りません。
わたしはそんな家やお客さんをたくさん見てきました。
基礎工事に欠陥があってやり直そうと思ったら、家をすべて壊すか、家自体をジャッキで持ち上げる工法での修正しか手はありません。
しかし、基礎は外から見えにくいため、欠陥があるのかどうかを容易に見つけることが出来ないので、床下に潜って調査する業者が増えてきています。
これらの業者は、善意の業者ばかりではないので注意してください。
でも、安心できる住宅メーカーに建築をお願いすれば、わざわざ他の業者に床下に潜ってもらわなくてもすみますね。