週末になると新聞折込広告はその量を増して、ポストに入りきらないくらい分厚くなって入っています。
新聞専売所はこの折込広告の部数が利益を左右します。
特に不動産関係の折込広告は週末に集中します。
当然住宅メーカーの折込広告もその中に含まれます。
その折込広告の中で、
『新築住宅690万円限定1棟お建てします!』
なんて言うのが、たまにあります。
今まさに家を建てようと思っている方々がこのような広告を見れば、すぐにチラシに書いてある電話番号に電話をして問い合わせしたくなりますよね。
限定とはいえ600万円台で家が手にはいるのですから、たくさんの方が問い合わせすることでしょう。
こういうチラシを見ると、文字通りものすごく安く家が建てられるわけですが、よ~くチラシの中を読んでみるとこんな事が書かれています。
『1ヶ月以内に住宅プランを決めていただける方限定』
ん?ちょっと待って!
よく考えてみましょう。
1ヶ月以内に住宅プランを決めるということはですよ…。
何もない状態から、生活をできる空間にするまで、たったの1ヶ月しか考えることができないと言うことです。
自分たちが住む大切な居住空間を、たった1ヶ月で決められますか?
建売住宅やマンションのように、すでに出来上がっているものを購入するのであれば、それはそれで良いと思います。
しかし、いくら安いからと言っても1ヶ月でプランを決めるというのは、『家はあきらめてつくるもの』と言われているような気がします。
とは言え、たった1ヶ月では自分たちのライフプランに合致したプランができない、と決まったわけではないので、この期間が短いことをどうこう言うつもりはありません。
問題は、690万円で生活に支障がない家が建つのか?と言うことです。
もちろんこういったことに対しても、チラシには必ずと言っていいほど記載されています。
たとえば、
- 『設計および建築確認申請代』
- 『宅外給排水設備工事』
- 『宅外電気設備工事』
- 『ガス工事』
- 『居室照明器具』
- 『カーテン・カーテンレール』
- 『式典費』
- 『外構工事』
- 『地盤改良工事』
- 『諸経費』
といった費用は別途であることを、チラシの隅の方に小さく書いてあります。
こういった費用が『ゼロ』円になることは絶対にあり得ません。
つまりチラシに書かれている690万円では家は建っても生活できません。
その前に、建築確認申請料を払わなければ、家は建てられませんね。
役所が許可してくれないわけですから…。
ではいったいどの程度これらの予算を組む必要があるか?
それは『誤解されることがわかっていてそれが狙いと思える曖昧な価格表示』で述べていますで参考にしてください。
そしてもう一つの問題。
こういったチラシの大きな狙いは、家を建てることができる土地をすでに持っていて、すぐにでも家が建てられるようなお客さんのリストを集めることにあります。
当然、問い合わせや応募のあった方々の大半は、これらの条件に合致しているわけです。
このようなお客様は、住宅メーカーにとってはヨダレの出そうなお客様ばかりで、メーカーのセールスマンからたくさんの電話や訪問攻撃をされてしまうことになるわけです。
訪問されたり電話をかけられたりすることがイヤな人とそうでない人とがいると思いますが、それが問題なのではなく、住宅の価格としては破格の金額であるかのような広告を出して客集めをし、生活できる住宅の金額とはかけ離れた表示をして、短期で家を建ててくれそうなお客様のデータ集めをして、営業攻撃をかけると言ったその姑息な手段が許せません。
ま、ビジネスですからね。それが生き残る手段の一つと言えばその通りです。
私が勤務していたメーカーでもこの方法は常套手段でしたから。
それはそれは昼夜問わずに執拗な営業をかけたりしました。
そのときにご迷惑をおかけした方々、本当に申し訳ありません。
このような手段でお客さん集めをするのではなく、心の底から喜んでもらえるような住宅をつくるように心がけるべきですね。
こんな人をだますような(決してだましてはいないのでしょうが)やり方では、口コミ客は増えないと思うんですよね。