建築現場

営業の人柄が良いというだけで購入する会社を決めてはいけません

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住宅を購入された方を対象に行ったアンケート調査で、購入したメーカーに決めた理由を聞いたところ、実に4割以上の人が「住宅メーカーの営業マンが気に入って、そのメーカーで購入した」という結果が出たそうです。
この結果は決して不思議なことではなく、モノを購入する側から見れば売る側の態度は重要ですし、対応の良い人からモノを買いたいと思うのは当然なことです。
応対が良ければ、次回もそのお店から品物を買っても良いと思うのが普通です。

アンケート調査の結果で…

このアンケート調査で見逃せないデータがあります。
それは「クレームになった原因・理由」です。
どのようなクレームがあったかを調査すると「住宅メーカーの営業マン」が起因のクレームがダントツなのだそうです。

  • 営業マンの人柄の良さを信じて家を購入したのだけれど、その営業マンは調子の良い人で、何でも「OK」と受けてくれたにもかかわらず建物には一つも反映されていなかった
  • 契約までは住宅建築にとても親身になってくれたのに、契約を交わしたとたん打合せにも同席せず、契約前にお願いしたいたことがまるで引き継がれていなかった
  • 住宅が完成する前に、担当だった営業マンが転勤になってしまい、引き継ぎがうまく行われていなかった結果、仕様が変わってしまった

など、担当営業マンの取り巻く事情によって迷惑を被ってしまった施主さんがいるようです。
このように、営業マンが引き起こす数々のクレームが少なくありません。
皮肉にも、住宅購入を決定づけるものの多くが営業マンで、クレームを決定づけるものの多くも営業マンという、実に興味深いことがアンケート調査の結果でわかりました。

営業マンの仕事は

住宅メーカーの営業マンは契約を取るのが仕事です。とにかく契約ありきです。
契約を取るためなら自らの性格を180度変えることなど朝飯前です(持論・・・)。
わたしが住宅メーカーの営業マンになる前は、訪問販売やルートセールスなどいくつかの業種の営業を経験しました。
現在は訪問販売に対する規制が厳しくなりましたが、わたしの現役当時はある意味やりたい放題で、かなり阿漕な方法でセールスしている人が多かったのです。
そんな中、成績が上位なのは決まって「外面の良い」営業マンでした。
しかし、内に潜むものは決して良いものではなく、上司には評判は良いが同僚や部下には嫌われる、性格の悪い人もいたように記憶しています。

その頃に参加したセールスマン研修では、

  • お客に対しては、嘘をついてでも良い人と思われるように心掛けろ
  • 良い人と思われたら、次は夕食を客先でごちそうされるまで付き合いを深めろ
  • 契約を交わしたらお客は既にお客ではないことを忘れるな

結構野蛮な研修をやっていました。

その後、規制などが厳しくはなりましたが、営業マン自体は今も昔も変わっていません。
住宅メーカーに転職しても、営業研修などの教育内容は変わることはなく、むしろさらにひどく野蛮になったように記憶しています。
もっとも良く記憶していることは、お客様よりも「社長」を崇敬する指向が強い研修が多かったことです。
社長は会社の代表であるからして崇敬するのは当然だと思いますが、もっとも崇敬するべきなのは「お客様」です。
会社のすべてのスタッフは、お客様から給料をいただいているわけです。
社長からもらっているわけではありません。
「会社」とは極めて宗教色の強い営利団体なのだ思ったのもこの頃でした。

それはともかく、営業マンに対する研修・教育は、お客様のために行われるものではなく、いかにたくさんの契約を取れるようになるかを中心に行われているもので、お客様が知れば、いま目の前に立っている住宅メーカーの営業マンの笑顔が、契約を取るための作り笑いであることがすぐにわかるはずでしょう。

このようにして、セールスマシーンとなった営業マンは、お客様がお金に見えるわけです。
お金に見えるからこそ何でもニコニコと受け入れるのです。
契約を交わしたあとは、「お金」に見えたはずのお客様が、クレームを発する「モンスター」に見えるのです。

すべての営業マンがこのような人ばかりと言うわけではありません。
人間的にすばらしい営業マンもいます。
ただ、お客様から見て応対してくれている営業マンがすばらしい人間かどうかを、数回の面談だけで見極めるのはきわめて難しいことだと思います。
であるからこそ、営業マンの人柄だけで住宅メーカーを決定するのは避けたほうが良いと思います。

すばらしい営業マンとは?

ところで、すばらしい営業マンはクレームなど無いのでしょうか?
そんなことはありません。
しかし、大事になる前に、親身になって解決に向けて対応します。
クレームと呼ばれる前に解決するために「苦情」が「感謝」に変わるのです。
だから、こういう営業マンはお客様から新たなお客様を紹介をいただけるのです。
そういう意味で、紹介客がたくさんいる営業マンが、すばらしい営業マンと言えます。

せっかく高価な家を購入するのだから、すばらしい営業マンと末永くお付き合いをしたいと思うのは当然です。
しかしどんなに良い営業マンも、転勤や退職などが絶対無いわけではありません。
転勤や退職をされれば、次に担当する者がどんな人かわからないばかりか、引き継ぎもどの程度行われるか想像も出来ません。
事実、私もそのような思いをさせてしまったひとりですから…。

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