建築に携わっていると、クレームはもちろんあるのだが、それ以上に感謝されることがある。
ここで言う「喜びの声・感謝の声」とは、過去に住宅を注文いただいたお客様から感謝や喜びの手紙やメールをもらった、ということ。
住宅建築という一家にとっては一大事業をお願いするのだから、感謝を常にもらっている住宅メーカーかどうかを判断する事が大切。
わたしも長い間住宅メーカーの営業マンをしていたためか、ささやかながらそれなりに感謝の声をもらったりしていて、実に営業冥利に尽きるわけ。
感謝したいのはこちらの方なのに…。
いただいた手紙は大切に保管し、展示場に来場いただいたお客様に、これらの手紙を見せることはしばしば。
なんと言っても最高の営業ツールだから、肌身離さず持っていたりした。えへへ。
というわけで、そんなわたしが住宅メーカーに勤めていた時代の感謝のメールを掲載してみる。
拝啓
この度は新築祝いのお花を頂戴し、家族共々びっくりしております。
こんなにも豪華な花束は見たことがありません。
本当にありがとうございました。
また会社からもお花が届きました。重ねてお礼申し上げます。
蔵太さんのおかげで、こんなに素敵な家が建ちました。
建築中、蔵太さんが新しい担当になられると伺ったときは、怒りに怒って当たり散らしてしまったこと、深くお詫びいたします。
前担当者の人柄に惹かれ貴社で建てることを決意したので、突然の退職の連絡に正直ショックを隠せませんでしたが、今となってみれば、はじめから蔵太様が担当だったらと、思って止みません。
前担当者は人柄こそ良かったのですが、こちらが要望したことに対して、法的な問題があるとか設計上の制約があるとか言って、ほとんどその要望を実現していただけませんでした。
しかし、蔵太さんが担当になられてからは、その要望のほとんどを実現していただきました。
蔵太さんにとりましては、大変な労力だったこと、存じ上げております。
こんな私たちのためにいろいろご尽力ありがとうございました。
特に感謝しておりますのは玄関の庇です。
図面上ではあまりにも小さい庇だったので、雨が入ってきてしまうのでは?と思って少々心配していたところ、蔵太さんより大きい庇に変更する提案をしていただきましたね。
今思えば、あのときに蔵太さんが大きい庇の提案をしなければ図面通り小さな庇のままだったと思います。
そしてきっと雨降りの日は玄関ドアが上まで濡れてしまうほど役に立たないものになっていたことでしょう。
でもこの大きな庇なら雨の日でも濡れずに玄関先で来客と話が出来ます。
また浄化槽の位置につきましても、変更していただき大変感謝しております。
将来この地区に本下水が埋設されることを先読みして、関係機関に埋設場所を調査していただきましたね。
もし図面通りの場所に浄化槽を設置していたら、本下水管とつなぐ工事の代金は軽く100万円を超えていたでしょう。
今のこの位置ならその10分の1程度の金額で工事が出来るとのことです。
浄化槽の一つ一つでこんなにも差が出るとは驚きです。
本当にありがとうございました。
これからも末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。
敬具
我々の仕事は、お客様が要望された通りに家を建てること。
当たり前のことをしているのになぜだか感謝の声をいただくわけです。
感謝すべきはこちらの方なのに…。
家を建てた対価としてお客様から代金を頂戴しているのに、感謝の声をいただく。
これこそまさにその住宅メーカーと担当した営業マンのお客様に対する熱意が伝わったわけです。
「お客様と一緒になって家づくりをして差し上げる」「苦楽をともに悩んで差し上げる」「考えもつかないような提案をして差し上げる」など、感謝を受けるべき題材は常に隣にある。
このような感謝の声を大切にしていない住宅メーカーや営業マンはダメ。
感謝されていることに気づいていないのでしょう。
まずは、担当した営業マンに直接聞いてください。
『過去に家を建てたお客さんからの感謝の手紙とかもらってませんか?あれば見せてくれませんか?』
と。
もらったことがない、あるいはもらったことはあるけれどいつでもすぐに見せられるように準備していないようであれば、その営業マン並びに住宅メーカーは失格。
だって、それはお客様からの意見や感想を大切にしていない証拠。
お客様からの声は、企業にとって最も大切な「宝物」なのだから。